「情弱」とか「情報弱者」って言葉、聞いたことありますか?「弱者」っていう響き、かなりネガティブな印象ですよね。
情報がこれだけ180°あちこちから飛んで向かってくる時代に、情報が足りないって何???と思うかもしれません。いろいろな解釈がありますが、情報はたくさんあればあるほど良いという意味ではありません。むしろ決められなかったり、イマイチな情報に振り回されたり、本当に必要な情報を後日聞いて「知っていれば違った選択をしたのに…」こんな状態になってしまいますね。
誰だって思い当たることはあるのではないでしょうか…本当に必要な情報だけが欲しいのに…何を信じたらいいんだろう…このブログでは受験や進学の場面における情報弱者についてまとめます。受験生を抱えるご家庭などで参考にしてもらえると幸いです。
私は栃木県のキャリアコンサルタントですが、一時期3年間だけ学習塾部門で教室長として働いていました。代打として働いていたのですが、社会人になってから、さらにキャリアに関する仕事に関わってから学習塾部門で生徒や保護者と接すると、メチャクチャ思うことがありました。
受験や進学のことになると、いつもは「先生にお任せします」なんて話している親御さんもさすがに真剣になります。受験生本人が言うこと、ネットで調べた情報、学校で聞いた話、友達との関係、ご家庭の願い、いろいろグチャグチャで、ご家庭の考えもまとまらない状態で受験期に突入することも普通の風景です。
多くの親御さんは本当はこう思っているはずです。
①将来やりたいことを、ぼんやりでもいいから描いてほしい
②それに向けて、どうしても行きたい高校(中学)を選んでほしい
③そのモチベーションが仕上がった状態で、受験勉強に集中してほしい
「しょうがないけど受験は頑張ってね」
「受験で失敗して痛い目に遭ったらいいんだ」
なんて思っている親御さんは確実に少数派でしょう。それがダメという話ではありません。
実態は…①、②、③のうちひとつでも叶っていたら御の字ではないでしょうか。これが叶わないのは、そもそも当たり前っていうあきらめも必要です。子どもだって、さらには親御さんだって気分で動くのはしょうがないです。それでも①、②、③を少しでも叶えるために、できることを考えたいと思います。情報が足りないのではありません。情報がグチャグチャで混乱しないことが大切です。情報弱者にならないためのポイントとしてまとめます。
①将来やりたいことを、ぼんやりでもいいから描いてほしい
これだけ職業体験をしたり、身近な職業について調べたり、先生と面談したり、将来のことを考える機会があっても「やりたいことがない」「大人になんてなりたくない」なんて声が出てしまうのでしょう。「早く大人になってガンガン働きたい!」なんて空気に満たされた教室は、むしろ異様ですね。私が思う要因は2つです。
・SNSやゲームで遊んで、好きな音楽聴いて、動画を見て毎日楽しすぎる
・自分の(生徒の)本当の強みを自覚していない
「何がやりたいの」と聞かれても、はっきり答えられる生徒は珍しいです。それより問題と感じるのは「あなたは何が好きなの?」「あなたは何が得意なの?」に答えられないことですね。これは全国学力調査でも傾向が出ています。
一番大切なキーワードは「あなたは」です。客観的な評価ではなく、自分は何が好きで本当は何がしたいんだろう、ここに正面から向き合う機会が少ないと感じています。実は情報弱者にならないためには、自分の情報をよく知ることが大前提です。自分のことをよく知ることができれば、どんな情報が必要なのか見えるようになります。
親御さんはこのプロセスを提供して、とにかく邪魔しないことが大切ですね。
②それに向けて、どうしても行きたい高校(中学)を選んでほしい
これは耳が痛い親御さんも多いのではないでしょうか。行きたい高校を選ぶのではなく、偏差値で行ける高校を探して、やっと入学したと思ったら大学受験に向けたガイダンスがスタートして、たった高校1年生の期間で「数学ができるなら理系、ダメなら文系」と乱暴にクラス分けをされて、やっぱり模試を受けて偏差値で行ける大学を選んで…そんな学生時代を過ごした方も多いはずです。もっと言うなら、働いてからも同じことが起きているのではないでしょうか。
よほどスポーツ推薦など、飛び抜けたモチベーションがない限り
・通える範囲で選んで
・偏差値で選んで
・そこまで選んでから「卒業進路ってどうなってんの?」
の順番です。
ちょっと無責任ですが、私が考える理想の受験は「どこの高校に行っても楽しそう」これです。「この学校にどうしても行かなければならない!」この心意気は理想かもしれませんが、その考え方が通用するのは「その高校に行く目的」がかなり固まっているときだけです。どうしても行きたい高校が見つからないかもしれません。
そんなときには
「この高校に行ったら楽しいことがありそう」
「もしこっちの高校だったら、ひょっとしていい大学に行けるかも」
「あまり行きたい高校ではなかったけど、でも制服はかわいいかな」
つまり、行く可能性の高校の良い情報をいっぱい集めることがポイントです。ネガティブな情報も耳に入るかもしれませんが、結局その高校を選ばなければならない状況が起きるかもしれません。情報弱者にならないためには、ネガティブな情報に惑わされるのではなく、行きたくなるようなプラスの情報を集めることです。まるでその高校の広報担当になったつもりで。
どうしても行かなければならない高校がないのであれば、どこの高校に行っても楽しい予感があったらマシな受験勉強になるでしょう。選択肢を増やすために偏差値を上げるのであれば、成績が上がることに意味を実感できるはずです。
私自身も3人の子育て中なので、自分のことでないのに受験に得体の知れない不安を感じる気持ちはわかります。
勇気が必要かもしれませんが
「息子(娘)が行きたい高校がないみたいで…」
と嘆くのではなく
「どこの高校に行っても楽しいと思うよ」
と親子で力を抜いた方が、結果的に勉強に集中できます。
③そのモチベーションが仕上がった状態で、受験勉強に集中してほしい
情報弱者っていう表現は、書いておいて微妙ですが私は好きではありません。弱者は食べられるイメージがどうしても浮かんでしまいます。受験や進学において志望校や目標が決まったら、情弱、情報弱者にならないためのポイントはひとつしかありません。①や②にまとめたように、志望校や目標が決まらなくても心配ありません、一緒です。
それは「自爆しない」これだけです。
私の好きな言葉に「敗因の99%は自爆である」という桜井章一氏の言葉があります。受験本番に向けた受験勉強でも、本番の試験中ですら、自分を邪魔する人はいません。まさか問題を解いている状況で邪魔された、そんな経験ないと思います。つまり試験に集中する、力を出し切る、そのために必要なことは「情報をシャットダウンする」これです。
せっかく考えている、解いている、手を動かしている、そんなときに邪魔するのは余計な情報です。これで気が散ります。迷ったり、気になったり、モチベーションが下がったり、まさに自爆です。
社会で言われている情報弱者とはニュアンスが異なる部分が多いと思いますが、自分をプラスに導く情報だけを仕入れて、それ以外は極力シャットダウンする、これは何においても鉄則です。特に受験のようなピリピリする状況では、これでもか!という情報量が自然と耳に入り、それだけでも親御さんとしては気が散ることでしょう。このときに本当に必要な役に立つ情報だけが目に入る、耳に入ることような環境を意識するべきです。
「そういえば○○高校に行っていたご近所さんから聞いたんだけど…」
これは、本当に気持ちが上がる情報でない限りシャットダウンした方が良いです。
「2年生のとき仲良かった△△君は受験でどこ受けるの?」
と気になっても、本人が気持ち的にひと段落したら聞くようにしましょう。
親御さんだけが受験に向けて焦ってしまって、当の本人はエンジンかかってない…これは学習塾の保護者面談あるあるです。このときに受験生本人に
「このままじゃマズイよ」
「そういえば模試で数学が下がってるけど大丈夫?」
と聞いても大丈夫ではありません。さらにいくら情報を投げかけても逆効果です。
さて、私なりに受験を迎えるにあたっての情報管理についてまとめました。情報弱者にならないポイントは「余計な情報に惑わされない」これに尽きます。参考にしていただけると幸いです。