【科学者テスラ】イーロン・マスクが憧れ、エジソンが嫉妬したニコラ・テスラとは?

2022年現在、電気自動車(EV)業界を牽引しているテスラですが、その社名の元にもなった天才科学者、発明家のニコラ・テスラを知っていますか?

エジソンとの強烈な電流戦争を演じたものの、歴史上は「電気=エジソン」とか「発明王=エジソン」と言われています。今回の記事では、あまり知られていないニコラ・テスラの生涯をダイジェストで解説します。「電気の分野は嫌い!」という受験生も多いですが、多少は興味を持ってもらえるとうれしいです。

ニコラ・テスラ

◆1856年 オーストリア帝国生まれ

◆5人兄弟(兄デン、姉ミルカ・アンジェリーナ、妹マリカ)

1856年生まれということは、江戸幕府が終わる大政奉還が1867年なので、その11年前ってことですね。5才の時に神童と言われた兄デンが亡くなって、それに負けじとかなり勉強を頑張ったようです。

グラーツ工科大学で電気モーターの勉強をして、交流電流についてヒラメキがあったようですが、父が亡くなったことで、経済的に苦しくなり中退、自力で勉強することになりました。

◆1881年 ハンガリーのブタペスト国営電信局に就職、その後、フランスのコンチネンタル・エディソン・カンパニーに勤めながら、1882年誘電モーターの開発に成功しました。

残念ながら、当時のヨーロッパでは誘電モーターに興味を持ってくれる人が現れず、アメリカに渡りました。ここで運命的な出会い(求人を見ただけですが…)があり、エジソンが経営するエジソン電灯会社に勤めています。この頃のエジソンはすでに発明家としての実績が認められており、エジソンに憧れて入社したのかもしれません。

 

エジソンは当時、直流システムによる電力ビジネスを展開していました。この時に「エジソン VS テスラ」という電流戦争の前哨戦みたいなものが行われます。エジソンは、自分がプッシュしている直流システムで動く工場を、交流システムで動かしたら5万ドル払うと、テスラに約束したようです。エジソン的には「やっぱり直流でしょ」という性能の自信と交流システムの難しさから、こんな賭けみたいなことを言ったようです。結局、これをテスラは成功させてしまい、エジソンは「冗談だよ」って支払わず、そりゃないでしょ…ってことで激怒したテスラは、あっという間に退職しました。これだけ聞くと、発明王エジソンって人間的にどうなの?と思っちゃいそうですね。

◆1887年 テスラは、テスラ電灯社を設立します。ここで交流システムの特許を出願します。翌年には、誘電モーターや交流システムに関する論文を発表します。これが引き金となって、電流戦争に続いていきます。

送電インフラを巡る電流戦争「エジソン VS テスラ」をカンタンに解説します。

◇直流派

当時はエジソンが推し進めていた直流(DC)システムで、都市や工場に電気が送られていました。直流電流の発電装置を目にしたテスラが、モーター回転時に火花を散らして、エネルギーのロスが起きていることを見抜き、交流電流の発電装置を発明しました。今でも乾電池やバッテリーは直流電流です。同じ電圧を維持したまま一定方向に流れる特徴がありますので、乾電池は必ず向きが決まっているし、バッテリーの繋ぎ方も決まっています。

◇交流派

テスラが提案した交流(AC)システムで、こちらの方が電圧の変換がしやすく、一般家庭への送電にも向いているという主張です。高電圧で遠くまで運び、電気を使う場所では電圧を下げることができます。同じリズムで電流の向きが変わりますので、コンセントから蛍光灯まで流れている電流は、行ったり来たりを繰り返している状態です。コンセントに上下の向きがないのは、交流だからです。

エジソンは危機感を抱き、交流電流の危険性まで主張するようになります。死刑台の電気椅子に交流電流を採用させようとすれば、テスラは100万Vの電流を身体に流して安全性をアピールするなど、主導権争いは続きました。

テスラの努力によって、徐々に世界的に注目されるようになり、シカゴ万博での採用、発電事業への応用がされるようになりました。現代でも交流システムが使われています。遠くまで安定して電気を運び、100Vでも200Vでも使いやすいように電圧を変えることができます。

電気がない世界は想像すらできません。テスラが果たした功績はとても大きいですね。

 

エジソンは発明した物は数多く、直感的にわかりやすいと思います。白熱電球、蓄音機、映写機を発明(改良)し、電話を進化させたのもエジソンです。また、GE(ゼネラル・エレクトリック)を設立することで、電気を普及させ電力ビジネスとして発展させた功績が大きいですね。世界的によく知られるようになりました。

テスラが発明した物も数多くありますが、直感的にわかりやすい例として、テスラコイル(100万ボルトまで出力可能な高圧変圧器)を紹介します。実用化には至りませんでしたが、テスラが描いた構想の大きさが伝わってきます。

上の写真はテスラコイルを使ったウォーデンクリフ・タワーです。巨大なテスラコイルを使って電磁波を発生させ、無線で電気を送る仕組みです。ひとつの巨大なタワーからケーブルなしで、地球上のあらゆるところに送電するというとんでもない構想(世界無線システム)でした。

これが実現できていたら、電柱や電線が必要なくなる一方で、電気エネルギーですべての活動が可能になるので、世の中が激変したと思いますが、届く頃には電気が相当弱くなってしまいダメだったようです。スケールが違う未完成です。

エジソンとは電気に対する向き合い方が異なり、テスラは純粋科学者ってイメージでしょうか。生涯独身で、マンハッタンのホテルで孤独に亡くなったのは、寂しい感じがしますね。

 

参考文献はこちらです。ざっくりと、でも大事なポイントを押さえて、テスラの生涯や功績を知るにはピッタリでしょう。