令和4年度(2022年度)栃木県立高校入試 数学のポイントを解説します

令和4年度の栃木県立入試に出題された数学について、個人的な感想も入れながら解説を行いたいと思います。

入試本番に向けて過去問を解きはじめたり、数学の点数(偏差値)をどうにか上げようと考えているようであれば、参考にしてもらえるとうれしいです。

学習指導要領が変わったことも影響していると思いますが、出題形式がガラッと変わりました。これまでは同じような傾向で「どうにかして、見たことがないような問題を出題しよう」という、誰のためにもならない苦労が垣間見えたのですが、難易度が若干下がって新しい傾向になったので、本当の実力で勝負ができて良かったと思います。

 

確率と統計だけの大問、関数のグラフだけの大問が登場したことは、インパクトありましたね。おそらく受験生(それよりも、学習塾で受験指導をしている先生かな…)はびっくりしたんじゃないかな?過去問対策が無駄になるわけではありませんが

「へー、今回は新しいじゃん…」

という、数学得意な受験生にとっては、楽しめたかもしれません。

「えっ?何か変わったの?」

という、数学なんて見たくない受験生にとっては、どうでもいい変化かもしれません。

大問1と大問2でほとんど正解して、連立方程式か証明を解いて、とにかく平均点を超えることを考えよう…と狙っていた偏差値50くらいの受験生が、もっとも動揺したかもしれないですね。

大問1

大問1はこれまでは14問、28点の問題でした。どんなに数学が苦手でも、ここを落とさないことがわかりやすい目標でしたが、令和4年度はずいぶん問題数が減りましたね。図形問題にアレルギーがあると、6~8は「げっ」と声が出たかもしれません。

6は、おうぎ形の弧の長さの問題

7は、中心角と二等辺三角形の問題

8は、三角形の合同条件の問題

です。このように「これは何の問題?」と心の中で確認してみると「あー、あれを使うやつね…」と考えやすくなりますね。

大問2

大問2は、まったく共通点がない問題が3つです。出題傾向は変わりましたが、見たことがあるような問題ばかりではないでしょうか?ここも大問1と同じように「これは何をする問題」を考えましょう。

1は、ルートの中を1、4、9にする問題

2は、料金で連立方程式を2本つくる問題

3は、わかっている解を代入する問題

です。2については、2割引きの処理が難しいかもしれません。

「2割引きってことは8割の料金」

「20%引きってことは80%の料金」

この連想がパッとできるまで練習しましょう。実際の買い物でも役に立ちますからね。

大問3

大問3は、確率や統計に関する問題ですね。1~3はそれぞれ違う問題なので、頭を切り替えながら解きましょう。

1は、安全にいくなら36マス書くのがオススメ。ちょっと面倒ですが、こんな問題で失点したくないですからね。

2は、大問1のレベルだから大丈夫かな?標本調査は、味見をすれば鍋の中身がわかるって問題ですよね。

3は、四分位数や箱ひげ図など新しく登場していますが、あわてなければ大丈夫かな?何問か解いていれば慣れると思いますが、記述式なので丁寧に答えを書くようにしましょう。

大問4

大問4、ここで作図です。野球で例えると、最初のバントがいきなりスクイズ、くらいの衝撃ですね。1は、だいたいこのあたりかな?って見当をつけてから、実際の作図をすることが大切です。作図の問題は、ほとんどの場合で条件が2つありますが、この問題でいう「直線 ℓ 状にある」のようなカンタンな条件は、いったん忘れるパターンがほとんどです。

2は、立体の問題ですが(1)を使って(2)を解くわけではないところが、易しいような、不親切なような問題です。(1)は三平方の定理ですが、どうしても苦手って受験生は図形を抜き出すことで倒しましょう。直角があって「長さを求めなさい」は三平方の定理を使う準備をしてもいいくらいです。

(2)は全体から小さい三角柱を除けばいいのですが、とにかく計算ミスに注意しましょう。立体にしてはカンタンなので、落としたくない問題です。

3は、相似の証明ですが、長さが出てこない相似なので「2角が等しいを使うんでしょ?」と連想して構わない問題です。難しくないからこそ、三角形の頂点の順番とか、しょうもないミスをしたくないところです。ここも抜き出した方が考えやすいなら、迷わず抜き出しましょう。

大問5

大問5は、あまり歓迎されない関数の問題が2つです。

1の(1)は大問1でも収まりそうな問題です。(1)が(2)や(3)のヒントになるような問題だと、すごく面白いんですけどね。

(2)は、いろいろな解き方があります。△OABの面積が8になることを利用しますが、Cの座標を(4、16a)とかおいて、△OCDの面積をaを使って表すこともできるのですが、ちょっと大変ですね。△OCDの高さが2になれば面積が8になるので、Cの座標は(4、2)だね…と決めてからaを求めた方が近道で早いですね。暗算でもいいので、(4、2)を代入して計算が合うことを確認しましょう。

(3)を解くには、結局CとDの座標をaを使って表します。「平行ってことは、傾きが同じなんでしょ」という連想がポイントの問題でした。

2は、このグラフの意味を読み取れますか?という今時の問題です。(1)から一発では答えが出ない問題なので、すぐに手が動かないなら飛ばすのもアリです。

(1)は、B社のグラフを求める必要があります。電力量料金(つまり1kWhあたりの料金)がそのまま傾きになることはわかりますか?「1進んだらいくつ上がるのか?」それがそのまま傾きになりますね。9400円になるのは、グラフでいうと後半の方なので

y=24x+b

として(200、7000)を通る関係から切片bを求めます。

(2)の方が解きやすいっていう受験生も多かったんじゃないかな?(1)と同じように、200kWh以上の時には、傾きが28であることがわかるので

y=28x+b

として(200、6800)を通る関係から切片bを求めます。

(3)も傾きに注目する問題です。ここまで徹底していると気持ちいいですね。ざっくりな言葉にすると「スタート地点であるエックス座標が200の時点で比べてみると、すでに下にあって、傾きも小さいんだったら、一生、上にあるグラフを追い越せないよね」という現象を、数学的に説明します。

先生の料金プランの見直しに付き合わされている問題ですが、結論がわかっているので考えやすかったのではないでしょうか。

大問6

大問6は、ここで定番の規則性です。栃木県らしくなってきました。反復横跳びの話です。

1は、例年と同じく数えまくるのですが「またぐ」という表現がわかりにくいので、矢印の数を数えるイメージで考えましょう。

中央からスタートして右→中央→左→中央→•••と行ったり来たりしながら、矢印が19本になるまで数えます。

2は、前の問題で「矢印の個数を数えればいいんでしょ?」とコツをつかんでいればどうにかなります。結局片側にa本あるなら、右端に行くまでにa本の矢印が必要です。中央に戻るのにa本、左端までa本、中央に戻るのにa本、つまり1往復するまでにa×4本です。

3往復だと12aですね。

3については、nをaとおいたかと思ったら、今度はbとおいて考え直しましょう。(Ⅰ)はちょっと混乱するかもしれませんが、右端に行くまでに矢印はb本になります。中央に戻るのにb本です。そのまま左端まで行ったとしたらさらにb本ですが、実際はその手前までを数えるので、3bー1となります。

(Ⅱ)は解き方がいくつかありますが、慎重に確実に矢印を数える方法でいきましょう。

左から2番目を1回目にまたぐのは3bー1本

左端をまたぐのは3b本

次に、左から2番目をまたぐのは3b+1本

中央に戻って4b本

左から2番目を3回目にまたぐのは7bー1本

と考えていくと

左から2番目を5回目にまたぐのは11bー1本

左から2番目を7回目にまたぐのは15bー1本

左から2番目を9回目にまたぐのは19bー1本

11回目にまたぐのは23bー1本

12回目にまたぐのは23b+1本

とわかります。実際に縦線を何本か(左右3本くらい)書いて考えてみるとよいです。

(23b+1)と(3bー1の8倍)が等しくなる方程式をつくればOKです。

模範解答

今回は出題傾向が変わったこともあり、大問3、5、6にどのように時間をかけるのか判断する勝負でした。全体の難易度は低めなので、できれば満点で難関校を目指すような受験生にとっては迷いがなかったでしょうが、60点狙い!みたいな受験生にとっては解く順番を変える作戦も重要でした。

私自身も受験指導を行ってきた経験では、この作戦を考える必勝法は「いろんな都道府県の過去問を解く」これが最強です。どのようなパターンで出されてもあたふたしないようになりますし、教える側が見ても「やるじゃん」という良問にも出会います。

令和4年度栃木県立入試、数学の過去問を解説しました。ぜひ参考にしてみてください。