令和5年(2023年)3月に行われました栃木県立高校の一般入試、数学について解説します。
実際の解き方だけでなく、受験本番までの勉強方法も加えた内容で紹介しますので、参考にしてみてください。
生徒数180名以上の学習塾で、教室長として進路指導を行ったり、数学講師を担当した経験から、ポイントをまとめていきます。
ここ1~2年で出題傾向が変わってきました。学習塾で教えている先生も、ある程度は指導の方針が固まってきたのではないでしょうか。
このブログで何回も書いている内容ですが、数学は1回でも偏差値が上がると、下がりにくい教科です。その分、苦手な状態から偏差値50まで伸ばす大変さはあるのですが、基本的には
「こういう問題は、こういう風に解く」
という必勝パターンがありますので、それを1つずつマスターしていきましょう。
それでは解説に移ります。まずは大問1です。
大問1
貴重な得点源となる大問1ですが、しっかり得点したいところです。
私が受験関係の解説をする時に、必ず伝えているのは
「点数を安定させたかったら、とにかく簡単な問題を落とさない」
数学の点数が安定しない原因は、ほとんどこれに当てはまります。
トラはウサギを狩るにも全力を出す、という言葉がありますが、簡単な解けるはずの問題で間違ってしまったら、次は繰り返さないことを最優先しましょう。
見たこともないような問題に、手も足も出なくても、まったく気にする必要はありません。
ちなみに、大問1では
4 不等式を作る
6 yをxで表す
7 円の性質
どんなに数学が苦手でも、このあたりは確実に得点できるようにしましょう。この積み重ねで解ける問題が増えていきます。
続いて、以前に比べるとボリュームがかなり増えている大問2です。
大問2
問1は解の公式、問2は問題文の通りにイコールで結ぶ、どちらも非常に重要でテッパンの問題です。大問1と同様に、必ず解けるようにしましょう。
問3は「解きにくいなぁ…」と感じた受験生も多かったのでは。3ケタの数字を文字を使って表すわけですが、最初の会話文のせいで混乱するかもしれません。
とにかく
100×◎ + 10×○ + ◉
の形に整えることを考えましょう。結局「◎、◯、◉を足すと、a+b+Cに戻ったね」という問題でした。
大問3
大問3の問1は、作図です。30°を作るのが難しかったかもしれません。
90° → 作るには垂直な線を書く
45° → 90°の二等分線を書く
60° → 正三角形を作図する
30° → 60°の二等分線を書く
15° → 30°のさらに二等分線を書く
このあたりまで応用できるようにしましょう。
問2
三平方の定理と立体の体積ですが、ここもテッパンの問題です。苦手意識があるなら、解答丸写しでもいいから解き方をマスターしましょう。
問3
合同の証明です。証明問題はいつでも中盤で出題されるので、安心の教科書レベルです。
「直角三角形の合同ならラッキー!」という感覚になるまで、いろんな種類の証明問題を解いてみましょう。
大問4
大問4は、ここ最近になって出題が増えたデータの整理系ですね。まずは言葉をしっかり覚えてほしいのですが、個人的には問1を確実に解けるかどうか、これの方が気になります。
書き方はいろいろありますが、タテ5、ヨコ5のマス目を書いて、考えなくていいマス目を消して、あとは数えるだけ…
ごちゃごちゃ考えずに書き出せるようになると、高校に行ってからもラクです。
大問5
令和5年度の大問5は、問1も問2も良問でした。
グラフの意味を理解していれば「どう考えればいいかな」と連想できたと思います。数学で安定して偏差値50を超えているのであれば、大問5は何回でも解いてもらいたい問題です。
問1は(3)がポイントですが「x座標がわからないから、しょうがないのでtを使って書いておこう」という文字の使い方がポイントです。放物線の問題ですが、1次関数でも同じ方法で解きますし、高校数学でも同じことをやります。
問2
(1)速さは傾き(なぜなら分母が時間で、分子が距離だから)
(2)通る2点から直線の式を求める
(3)追いつくとは、直線同士がぶつかること
とにかく1次関数の大切な考え方が詰まった問題なので、グラフから「何が起きているのか」読み取れるように練習しましょう。
大問6
大問6は例年通り、規則性アレルギーの受験生に対して「とりあえず(1)と(2)だけやっとこ…」という内容の問題です。
令和5年度の図形を使った規則性は、なかなか満点は難しかったのではないでしょうか。難問よりは奇問に入る問題だと思っています。論理的思考力とは全然違うかな…
正方形に対して、【黒】いタイルと【白】いタイルを貼り付けるという、何がしたいのかわからない状況ですが、ポイントは「【黒】を1枚貼ることと【白】を4枚貼ることは同じこと」です。
問1
n=4のとき、つまり1辺が4の正方形に【白】を何枚貼りますか?という問題です。偏差値60以上を目指すのでなければ、ここは16マスの正方形を書いて「1マスに4枚貼るから…」と考えればOKです。
以下は、完答を目指すなら参考にしてください!
後々使うので、ここで解説すると
【黒】を使わないのであれば【白】の枚数は「1辺の長さを2乗して、さらに4をかけた枚数」と計算できると、最後まで解答するヒントになります。
【黒】を使うと【白】の枚数はどうなるでしょうか?
【黒】を1枚貼ると【白】の枚数は4枚減ります。つまり【白】の枚数は
「1辺の長さを2乗して、さらに4をかけて、そこから【黒】の4倍を引く」
この関係を押さえておきましょう。
問2
【白】の枚数は、4×5² ー 4×【黒】と表せます。もちろん【黒】は文字で表した方が計算しやすいのですが、解説としては【黒】を求めていることを強調するため、このようにしています。
【黒】の枚数は【黒】で計算しましょう。
【白】と【黒】を合わせて49枚なので
4×5² ー4×【黒】 + 【黒】 = 49
という式が成り立ちます。ここから【黒】が17枚と求められます。
問3
ここは激アツですね。学習塾で似たような問題を解いたことがあれば、応用できると思いますが、初見では他の問題に時間をかけた方が良いでしょうね。
正方形の1辺がaで、【黒】がb枚なので
【白】は、4×a² ー4×bと表すことができます。
【白】と【黒】を合わせた枚数は、4×a² ー4×b+bとなります。
ここで【白】と【黒】の貼り方を変えるわけですが、カンタンに言ってしまうと【白】と【黒】の枚数が反対になる、と考えます。
貼り方を変えた、新しい正方形については【黒】から考えます。
【黒】の枚数は、さっきまではbでしたが、これが【白】の枚数になります。すると【黒】の枚数は、正方形のマスの数から【白】を引いた数です。
つまり【黒】の枚数は、a² ーbとなります。
【黒】がわかれば【白】の枚数は、4a² ー4×(a² ーb)と表すことができます。
【白】と【黒】を合わせた枚数は、4a² ー4×(a² ーb)+a² ーbです。
ここまで整理できたら関係式を作りましょう。
【新しい貼り方】は【最初の貼り方】より225枚少ない、に当てはめると
a² ー2b=75
とまとまります。
a²は、75よりも大きくなるわけですから
aは9以上とわかります。その次の10だとするとbは整数にならないのでNGです。
模範解答
模範解答は以下の通りです。
解いてみて、正解だったのか不正解だったのか、この結果はもちろん大切ですが、それよりも
・解き方はわかっているのに、計算ミス
・まったく手が出ずに、飛ばしてしまった
この2つを区別することの方が、ずっと大切です。どうしても点数が伸びないのであれば、正解かどうかは気にしないで
「式や証明を書く問題については、模範解答をとにかく写す!」
の勉強法もおすすめです。結構これを繰り返すだけで、問題を解くパターンを身体で覚えることができます。ダラダラ写すのではなく、全力で書いて終わらせることが大切です。
令和5年度(2023年度)も、難易度(平均点)は例年と同じくらいではないでしょうか。
数学が苦手…なら、大問1から大問3で40点が目標ですね。
進学校を目指すなら、大問5まで満点を目指しましょう。
大問6は、配点が13点しかありませんから「どこまで解くのか」と「大問5までを見直す」の時間配分を間違えないようにしましょう。
解答については、過去問にも掲載されていますので、かなり抜粋してポイントを紹介しました。「これは落とせないだろう」という問題は、受験では定番(高校でも絶対使う解き方)なので、必ず自力で解けるように練習しましょう。
参考にしてもらえたらうれしいです。