令和5年度宇都宮東高等学校附属中学校(矢板東中・佐野中)適性検査の問題と解説(2023年1月)

令和5年度(2023年1月)に行われました栃木県立中学校(宇都宮東高等学校附属中学校・佐野高等学校附属中学校・矢板東高等学校附属中学校)の受験問題(適性検査)と模範解答を紹介します。

すでに内部進学して高校生になった長女は、独学で合格したのですが、過去問については私も一通り見ていました。

 

 

私なりにブログで解説する理由は2つあります。

・公立中高一貫入試の受験問題は(全国どこでも)高校入試にそのまま使えそうなくらいの良問が多くて、単純に「面白いな」って思うからです。進学校の高校入試に使っても、満点は難しいんじゃないかな?

・栃木県の中学入試に関しては事前情報が少なくて、何かと苦労した覚えがあります。かなり主観的にはなってしまいますが、あなたが中学受験に興味があったり、具体的に検討しているのであれば(学習塾に行かない、家庭教師を使わない家庭はなおさら…)少しでも参考にしてもらえるといいかな、と思っています。

 

適性検査については「受検」という書き方もあるのですが、私のブログ内では「受験」で統一しています。

大問1から解説します。定番の「資料読み取り」のほっこりストーリー形式です。つい最近も出題されましたが、今回もみそ汁の作り方が登場します。「料理の手伝いくらいやっておいた方がいいよ!」という出題者のメッセージでしょうか?

いろんな意味で家の手伝いはやっておいて損はないです。

大問1の問1です。よほど資料の読み取りに苦手意識がなければ、最初に解くことになると思います。最後の見直しもしっかり時間をかけて、落としたくない問題ですね。

資料(グラフ)の読み取りをしますが、問題によって、問題文をしっかり読んでから考えた方が近道だったり、先に解答の選択肢に目を通した方が早い場合があります。今回の問題では、資料が2つしかないので「どの資料を見ればいいかな?」とはならないと思います。

資料のタイトルに注意して、王道で上から読んでいけば良いのではないでしょうか。

ア・・・〇です。「知っている人の割合」の話をしているので、右のグラフです。「まったく知らない」は白い部分ですので、20~29才の割合が大きいですね。余談ですが、このアンケートの方法はイマイチですね。何を知っているのか、何を知らないのか、よくわからないアンケートです。「ある程度知っている」が一番多いのは当たり前の結果ですね。

イ・・・食べ残しの割合です。ここが一番の悩みどころになると思います。見るのは左の資料で、2014年と2020年だけです。それぞれ「1047」と「1050」にマルでも書いて見やすくして考えましょう。

棒グラフの数字を全部足し算して、割合を求める問題だったら激アツでしたが、2020年の方が棒グラフが短いのに、食べ残しの量が増えていることがわかります。つまり割合としては、かなり増えているんじゃない?と判断できます。

ウ・・・〇です。「直接はいき」と「食べ残し」の量に注目です。「直接はいき」は黒い部分です。2016年以降、増えて~減って~増えて~増えて、の流れです。「食べ残し」は白い部分です。増えて~増えて~減って~減って、です。

最後に「過剰除去」はグレーの部分です。2016年以降は順調に減っていますね。

エ・・・「知っている人の割合」の話なので、右のグラフです。黒い部分と斜線の部分を合わせた大きさ(長さ)を見ると、15~19才はかなり頑張っていますが、60~69才、70才以上の方が長いです。さすがという結果ですが、10代がイメージしている食品ロスとは別物じゃないかな?

量の話なのか、割合の話なのか、しっかり区別して考えましょう。

問2は、きんぴらとみそ汁の話です。しんじさんが何をやろうとしているのかしっかり読み取りましょう。普段から料理をしていたり、そのシーンを思い浮かべることができれば楽勝でした。

きんぴらとみそ汁の同時調理です。コンロが1つしか使えないので、コンロを使わない時間をどうするか?がポイントでした。きんぴらの調理はずっとコンロを使います。みそ汁の調理でコンロを使わない時間を探しましょう。

手順②は、なべに水とにぼしを入れているだけなので、コンロは関係ありません。ここで25分かかりますので、手順②に注目です。

この25分の間に、きんぴらを完成させて、みそ汁の手順③も終わらせてしまうので、合計50分となります。うっかり全部足して60分!と解答した受験生も多かったんじゃないかな?

「さすがにそんなにカンタンじゃないよね?」

そう思ったらなおさら、最後に必ず見直しましょう。

大問2の問1は、これも恒例の理科っぽい文章問題です。考えすぎなければ「ウ」を選べると思います。その後に続く、熱気球を作りましょう!は「うわっ」と思った受験生も多いのでは。

熱気球を作り直した図2を見ながら考えましょう。

①②③の型がありますが、一番考えやすいのは①ではないでしょうか。真下から見た平面図(黒い部分)が八角形なので、①も八角形になることがわかります。この時点で「イ」か「ウ」は使いそうですね。

「イ」と「ウ」のどちらかな?を考えるために、いったん離れて②に注目します。②はふくらみを作るために、ふっくら広がっている形を選ばなければなりません。②の選択肢は「サ」しかないので、ここが突破口です。

(ここが???となるようなら「地球儀の展開図」と検索してみましょう。ふくらみを作るためには、どういうパーツが必要なのか理解できると思います)

「サ」に注目しましょう。赤矢印の長さは、マス目2個分くらいなので「ウ」では長すぎです。よって「イ」も使うことがわかります。

「サ」の長い方の辺(青矢印)は③と重なります。熱気球の下半分はふくらませるわけではないので、台形になります。「エ」「キ」「ク」のどれかになりますが、「サ」を見ると、マス目6個分の長さでピッタリ重なりますので「ク」を選べばOKです。

続いて大問3です。

大問3は、問1が過去問にも出題されたリズム系、問2がデータ読み取りです。ストーリーとしてはつながっているけど、全然違う問題ですね。

問1は、♩=60だと「1分間(60秒)で1回打つリズム」という関係がポイントです。♩=120だと「1分間(60秒)で2回打つリズム」です。

3分21秒だと何回打てますか?を聞いています。3分21秒は201秒です。1秒間に2回打つので、402回打てる(とべる)が解答です。「打つ」と「とぶ」を同じことにして考えれば大丈夫かな?

過去問で解いていれば、あわてずに考えられたと思います。

個人的には、問2は「これって適性検査とは違うんじゃない?」と感じました。

①と②は丁寧にデータ(こうもく別得点表)を照らし合わせればいいのですが、ちょっとしたカン違いが怖いですね。③と④は推理っぽい感じなので、気がつかないなら迷子になること確定っていう問題です。

前半では、「今年の記録目標」と「今年の記録」を比べるわけですが、記録目標が18kg、記録が17kgなので、それぞれ得点表にチェックします。あく力に関しては、同じ点数(7点)になりますね。

このようにして、記録を読み取りながら「得点は?」と照らし合わせていけば、①は3、②は50、と埋まると思います。

③が難しいですね。

「私たちの学年で、総合評価Bになるためには?」の話をしていますが「私たちの学年って何年生のことなの?」を考えることになります。記録を見れば、低学年ではないかな?と察することができるのですが、テキトーに書くわけにはいかないので、最初の図1に戻ります。

昨年の記録は、50点で総合評価Cです。これを使って考えてみましょう。

50点でCになるのは、図2総合評価表を見ると(人差し指のところ)昨年が、小4か小5だとわかります。今年になって、小5か小6になっているわけですが、小6だとすると総合評価Bは63~70点なので、あんなに練習したシャトルランを待たずしてゲームオーバーです。

この会話をしているってことは、Bになるチャンスが残っているわけなので、昨年が小4、今年は小5とわかります。Bになるために必要な最低点③は58です。シャトルランで8点取ればいいので、④は44です。ガムシャラにやっても解けない問題でしたね。

大問4の問1です。ストローを切って楽器を作るわけですが、見直し確認も大変な問題なので、正解率は3割くらいだったんじゃないかな?

チカラワザで書き出した方が間違いないと思いますので、いったん並べてみます。

◆大前提

・ストローは21cm(見落としたら終了)

・ド(16cm)~高ド(8cm)で、8本使う

 →「ストロー21cmから2本は取れそう…」

・間隔(6cm)で、7本使う

 →「ストロー21cmから3本取れる!」

◆笛

【ド】16cm

【レ】14.4cm

【ミ】12.8cm

【ファ】12cm

【ソ】10.4cm

【ラ】9.6cm

【シ】8.8cm

【高ド】8cm

ここまで書き出したら、組み合わせを考えてみます。【ミ】と【高ド】なら21cmに収まりそうです。このようにして考えると、以下のようになります。

【ド】16cm

【レ】14.4cm

【ミ】12.8cm +【高ド】8cm

【ファ】12cm +【シ】8.8cm

【ソ】10.4cm +【ラ】9.6cm

一気に5本に減りましたね。【間隔】6cmを入れていきますが【ド】に組み合わせるとNGなので注意しましょう。

【ド】16cm

【レ】14.4cm +【間隔】6cm

【ミ】12.8cm +【高ド】8cm

【ファ】12cm +【シ】8.8cm

【ソ】10.4cm +【ラ】9.6cm

【間隔】6cm +【間隔】6cm +【間隔】6cm

【間隔】6cm +【間隔】6cm +【間隔】6cm

この7本が解答です。なんだかんだ言って、一覧を書き出した方が自信を持って答えられるし、見直す時にもラクです。

3パターンの買い物で安い方法を選ぶ問題です。ストローがお買い得品!って面白いですよね。笑っちゃった受験生が2割はいたのでは。

3パターンとも(3店とも)合計金額の求め方を書きますので、丁寧に1つずつ書いていきましょう。

◆大前提

・400本買う

◆A店

・1袋100本なので4袋買う

・1袋280円

◆B店

・1袋50本なので8袋買う

・1袋150円だが、1袋につき10%引き

◆C店

・150本入り400円なので2袋買う

・残り100本は、10本入り29円で買う

・合計1000円を超えるので、配送料はかからない

ここまでチェックしたら、式と言葉を使って書きましょう。一番安い買い方はB店となります。ストロー笛を作るのは、なかなか大変でしたね。

大問5の問1は、キーボード入力の話です。

「日々お」を平仮名にして「を」に直すわけですが「日々」もバックスペースで消すことを忘れないようにしましょう。今回の適性検査については、いつもよりうっかりを誘う問題が多いですね。

問題文にアンダーラインを引いてくれていますので、その文章に当てはめて答えればOKです。「おしますか」と聞かれているだけなので、余計なことを書かずに「~をおす」と答えます。

問2は、よく出題される条件読み取りパズルです。

読解力というよりも試行錯誤する能力を問われます。今回の問題は、埋めていく枠がないので自分で作っていきます。前列と後列を上下どのように書くのか、注意しましょう。ここでは見た感じに合わせて【前列】を下にします。

◆後列【 】→【 】→【 】→【 】→【 】

◆前列【 】→【 】→【 】→【 】→【 】

として順番が見えるようにしてから、会話文をしっかり読み取りましょう。省略して書きますが、下書きは自分がわかればいいので、見やすいことを優先しましょう。

・前列【足】→【ジ】は確定

・前列【げ】と【さ】は離す

・前列【げ】と【さ】のどちらかは最後

・後列【き】は最初

・(ちょっと飛ばして)【指】は最後

・【ふ】はあいたところ

ここまでをまとめてみましょう。

◆後列【き】→【 】→【 】→【 】→【指】

◆前列【 】→【 】→【 】→【 】→【げorさ】

前列の方が

ちょっと飛ばした部分は、すべて前後の関係なので【ふ】が前列の最初になることも決定です。【さ】の後列は【ぐ】なので、前列の最後は【げ】ですね。

◆後列【き】→【 】→【 】→【 】→【指】

◆前列【ふ】→【 】→【 】→【 】→【げ】

前列の方がヒントが多いので、こちらを考えます。【足】→【ジ】の流れは決まっているので、次の2パターンしかありません。

①【ふ】→【さ】→【足】→【ジ】→【げ】

②【ふ】→【足】→【ジ】→【さ】→【げ】

②のパターンだと【さ】→【げ】が連続になるのでNGです。よって、①のパターンで前列を固めれば、後列も決まりますね。カタカナ記号で下書きする受験生もいるかもしれませんが、会話文との当てはめる作業が大変になると思いますので、会話文に出てくる表現を一言で書く、がおすすめです。

 

以下、模範解答です。

令和5年度の適性検査については、過去問の傾向に沿いながら、ちょっとひねってみましたって印象です。過去問より明らかにカンタンになったのは、音符の問題くらいじゃないかな。ここ数年は難易度が下がっていましたが、一気に戻した印象です。

想定ですが合格点(得点率)は60%前後ではないでしょうか。凡ミスでの失点が多発するような問題構成だと思いますので、見直しまでしっかり時間をかけられるかどうか、見直しを上手にできるかどうか、このあたりがポイントだったと感じます。

最後に、適性検査の対策にあたって私が考える必勝法を紹介します。学習塾教室長として経験してきたことであったり、長女の受験勉強を見ていて感じたことなので、あくまで主観的ではありますが、参考になれば幸いです。

 

①試験がはじまったらパラパラ全体を見る

テスト本番のように緊張する場面でも、いったん落ち着いて全体を見渡すとリラックスできるものです。これは普段から模試などでやっておかないと意味がないので、クセにしてしまった方が良いです。

 

②手を動かしながら考える

適性検査は、試しに書いて考える、書いてみたら発見する、こんな問題が多いです。問題文とにらめっこするヒマがあったら、書いてみる習慣をつけましょう。手を動かす時には、時間をかけずに見やすく書く!これができるだけで、後々大きな差になります。

せっかく最後の見直しの時間を確保しても、読みにくい、何考えていたのかわからない、では2回目を解くようなものです。下書き(特に一覧表!)を書くのが上手になれば、見直しがスムーズになりますね。

 

③カンタンな問題ほど落とさない

これは高校受験、大学受験、大人になってからの資格試験、何にでも言えることですが、まず目指す状態は「みんな解ける問題を落とさない」これができない限り、平均点には到達しませんし、点数が安定しません。

今回は難易度が上がりました。難しい問題は他のライバルにとっても難しい…と割り切って、解ける問題を絶対に落とさない!これに集中しましょう。

 

④平気で飛ばす

適性検査は、難しいかどうかよりも、自分と相性が良いかどうかが大切なので「この問題は後にしよ…」とあっさり飛ばす勇気が必要です。特に「今年は難しいなぁ…」と思ったら(何回でも書きますが)カンタンな問題を絶対に落とさない!が重要です。

 

⑤過去問で慣れておく

いろんな参考書や問題集をずらっと揃えて、解きまくる勉強法はおすすめできません。顔見知りの問題が増えることによって安心感が増えるかもしれませんが、2冊くらいの問題集を2~3周してもらった方が自信に繋がると思います。

ここは考え方にもよりますが、問題集をやり切れず「ここまで手が回らなかったな…」という状態で本番に突入しないことを優先した方が良いですね。実際に100%独学の長女も県別過去問と全国テーマ別過去問だけでした。

 

 

以上、令和5年度宇都宮東高等学校附属中学校(矢板東中・佐野中)適性検査の問題と解説でした。栃木県立中学校の受験を検討されているようでしたら、参考にしてみてください。