公立中高一貫校の中学受験(受検)で行う適性検査は、一般的な受験とは異なる準備が必要です。
・私自身が生徒数180名以上の学習塾で、教室長を勤めていた経験
・長女が学習塾や家庭教師を使うことなく、公立中高一貫校(宇都宮東高校附属中学校)に合格
これらの経緯から得た適性検査のポイントを解説します。
「適性検査の対策って何すればいいの?」
「適性検査なんて解けるかなぁ…」
「家でどのようにフォローすればいいの?」
と疑問を持っている親御さんの参考になれば幸いです。
- 適性検査の特徴とは?
- 適性検査の合格点とは?
- まずは適性検査で戦える読解力を習得する
- 適性検査の具体的な対策方法とは?
- 問題集の選び方
- 過去問は何回解けばいいのか?
- 読解力、試行錯誤力は大人になっても重宝する
- まとめ
適性検査の特徴とは?
おそらく中学受験(公立中高一貫校)にチャレンジするきっかけがないと、適性検査って子どもだけでなく、親御さんも聞いたことないのではないでしょうか?
私もそうでした…
長女が小学5年生の終わりくらいに「中学受験をしたい」と言い出して、ノーマークだった私は、初めて適性検査の過去問を目にしました。
学習塾で教えていた当時は、中高生の生徒が中心だったので、適性検査って何となく
「総合問題でしょ?」
くらいのイメージしかなかったので、ちゃんと解いてみた時には衝撃でした。
「高校入試でもいいくらいの良問じゃん」
が第一印象です。
・設定の読み取りや状況のイメージが必要
・割と生活に密着している内容
・物知りかどうかは、どっちでもいい
・ちゃんと読み取って、手を動かさなきゃ解けない
そんな問題ばかりです。
通知表の点数が高いお子さんが、適性検査にも有利とは限らず「成績優秀である」とか「学校に対して積極的」という評価は、適性検査にまったく関係ありません。
(もちろん、通知表が良い=内申点が高い、は大きなアドバンテージです!)
適性検査を解くために必要なスキルは
・読解力
・生活力
・試行錯誤力
の3つにまとめることができます。
適性検査の合格点とは?
私自身は栃木県に住んでいますので、この県内の情報が中心にはなってしまいますが、おそらく公立中高一貫校であれば、全国的な傾向と対策は変わらないと思います。
合格点はその年度の難易度によって、40点台から80点台までと、相当幅が広いです。
とんでもなく面倒な、パズルのような問題が並ぶ年度もあれば、イージーミスがなければ満点狙えるんじゃない?という年度もあります。
難易度がどうであれ、合格のための作戦は一緒です。それは
「みんなが解ける問題は絶対に落とさない」
これだけです。
難問は誰が解いても難しいです。
時間が足りないボリュームなら、誰が解いても時間切れになります。
もちろん、1問でも多く正解できるように全力を尽くすわけですが、自信がない問題に時間を費やすのは、完全に自滅のパターンです。
練習の時から、過去問を解く際は問題用紙をパラパラ見て
・確実に解ける問題は、しっかり得点する
・苦手な分野、すぐには解けない問題は1回飛ばす
・余った時間は、難問でミラクルを狙うより、あやふやな1問を確実に当てにいく
おおよそ上記の作戦で、平均点を割ることはなくなるでしょう。ここで非常に大切な能力があります。
読解力です。
問題を正確に読み取って解くためには、読解力が必須です。同じくらい大切なのは「自分が確実に解ける問題かどうか?」これを見抜くスピードです。
ダラダラ考えて「やっぱり難しいから、飛ばそ…」
これでは本当に無駄な時間を使ってしまいます。
すばやく問題全体を正確に読み取り(読解&速読)、解くための方法を考えるわけですが、ここまでに1分以上かかったらNGです。
問題の最後まで目を通したら、実際に解答を書くまで手を進めるのか、1回飛ばすのか決定します。
過去問を解くのは、ボリューム、難易度、問題構成に慣れる意味が大きいですが、実は「問題の構造を見抜く練習」を意識すると、作戦で失敗することは激減します。
そのための読解力です。
まずは適性検査で戦える読解力を習得する
読解力を鍛えるのは、非常に難しいです。
本を読むことに慣れているのか、読みながら考えることができるのか、正確に読み取る慎重さとスピードのバランス、たくさんのポイントがあります。
読解力を小学校の集団授業で向上させるのは、限界があると考えています。先生は可視化できないし、お子さんが「自分はできている」と思ったら終了してしまうからです。
厄介なことに、読解力が低くても、小学校の単元テストくらいなら平気で得点していまいます。
小学5年生、6年生になって中学受験を戦うことになってから
「あれ、ちゃんと読めてない…」
なんて発覚したら、そこからの底上げは大変です。
遅くとも、お子さんが初めて過去問を解いた時には、当たったかどうかよりも、読解力があるかどうかを確認しましょう。
・うっかりが多い
・自分勝手な解釈をしてしまう
・あるパターンになると、読み取りが遅くなる
いろんな傾向がありますが、過去問で70点を目指すよりも、まずは読解力の底上げです。親御さんはお子さんと衝突しないように、問題を正確に読み取っているかどうか拾っていきます。ちゃんと読み取れていないと、親御さんがイライラするシーンなので注意してください!
専門的に扱っているケースが少ないのですが、読解力向上、速読力向上に特化した学習塾もありますので、積極的に利用するのもおすすめです。
オンラインであれば、負担にならずに無料体験ができると思います。
読むは『すべての学習』の始まり。速読解トレーニング(オンラインあり)
適性検査の具体的な対策方法とは?
生活力を高める
2度と使わないようなトリビアを、一生懸命覚える必要はないのですが「小学6年生なら、これくらい知ってるよね?」というテーマを扱うので、生活のなかで体験を増やしていきましょう。
タイミングにもよりますが、過去問を解きはじめてから
「えっ?味噌汁の作り方って知らないの?」
と発覚して、急に「料理もやりなさい」では、本当に受験のための作業になってしまいます。
家事は一通りできるのが理想です。しかも、なるべく手作業です。
・洗濯物が早く乾くための工夫を考える
・簡単な図面を書いてからミシンを使う
・調理機器を使って2品を同時に料理する
あくまで一例ですが、受験勉強の計画を立てた段階で「土曜日の夕飯は一緒に作る」みたいなルールを決めるとスムーズです。
試行錯誤力を高める
小学校のテストではほとんど100点!要領がいいので、頭の中でパパッと答えまで考えちゃう、こういうお子さんは、試行錯誤する習慣がないケースが多いので注意しましょう。
適性検査では、少なくともアンダーラインや矢印を引きながら問題を読み取りますし、わかっていることを少しずつ書いていくことで、やっと突破口が見つかる問題も多いです。
この「とりあえず書きながら考える」という解き方を、早い段階で習慣にしないと、持っている能力がちゃんと発揮されません。
どれだけ簡単な問題でも
・ペン(鉛筆)は置かない
・問題用紙のキーワードにはアンダーラインを引く
・暗算してから書くのではなく、書きながら解いて暗算で確かめる
のように、手を動かすことに慣れさせましょう。学習塾で教えていた当時も、上記は徹底していました。大きな差になりますよ。
問題集の選び方
特に「公立中高一貫校しか受けません」というのであれば、問題集は2冊あれば充分でしょう。
私が長女の受験勉強でサポートしたことは、問題集選びくらいでしたが、下の2冊でいいだろうと判断しました。
あまり悪くは書けないのですが、お子さんの成績が安定しないと、問題集や参考書をとにかく買う親御さんが必ずいます。やることが増えるだけで、確実に消化不良になりますし、多くの場合は教科書をしっかり習得していないことが原因です。
その2冊は以下の通りです。
・都道府県別の過去問
・テーマ別の全国過去問
都道府県別の過去問は、適正検査の中身がわかり、作戦を立てたり、お子さんの実力を見るためには必須です。
都道府県別の過去問は、Amazonで購入できます。小学5年生〜6年生になる春休みまでには準備しておきましょう。
もう1冊は、テーマ別の全国過去問がおすすめです。もちろん公立中高一貫校のものです。
全国の過去問から、汎用性のある良問をピックアップしているので、解ける問題のバラエティを増やす意味では効果大です。
顔見知りの問題が増えるイメージですね。
私と長女で厳選した、テーマ別の全国過去問も紹介します。薄いのでやる気になりますよ。ずっしりとしたボリュームにする必要はありません。
過去問は何回解けばいいのか?
小学6年生にもなると、さすがに小学校の内容(特に算数)が難しくなり、宿題もあると思いますので、そちらで遅れがないように注意しましょう。
1週間単位で勉強計画を作るご家庭が多いと思いますが
・過去問1周目は、できれば週5日かけて、大問をひとつずつ解いて理解する
・過去問2周目は、土日を使って本番と同じ時間設定で解く
この2周で充分です。
3周目をやるとしたら、だいたいの解き方を覚えてしまっていると思いますので、振り返りとか「やった感」で自信を持つことが目的になるでしょう。
1周目と2周目の間で、対策することは
・テーマ別の全国過去問(2周)
・作文過去問(こちらも2周)
・面接対策
・単体スピード対策(読む、書く、計算する)
・小学校の生活をとにかく楽しむ
これらの内容を進めていきます。
適性検査の対策に絞ると、とにかく消化不良で直前期を迎えることは避けましょう。
都道府県別の過去問は必ず2周行います。
テーマ別の全国過去問は、優先順位が低いので「あれ?2周完走が厳しいな…」と感じたら、親御さんの方でテーマを絞って、その対策だけに集中しましょう。
(だからテーマ別がおすすめ)
読解力、試行錯誤力は大人になっても重宝する
適性検査の対策を行うと、必然的に読解力と試行錯誤力が向上します。小学校の授業で扱う(英語も含めて)5教科よりも、読解力や試行錯誤力の方が、将来に活かせると感じています。
物知りかどうかは、社会に出てからは重要ではありません。必要な知識や経験があった時に、その都度習得できる行動力の方が重要です。
お子さんが社会に出る時には、今はまだ存在しない仕事に就く可能性が高いと思います。
「会社で正社員として働くのが安定」
「大企業や公務員が安定」
という価値観も変化するでしょう。
この2010年くらいから、スマホが普及して、SNSや動画が当たり前になり、サブスクサービスが浸透しました。新しい産業、新しい職業がたくさん生まれました。この先10年、20年でも大きく社会は変わるでしょう。
親御さんがアドバイスできることは少なくなります。
そんな時代に、お子さんが自ら情報収集して、答えを探して、試行錯誤してみる能力は必ず武器になります。
他の中学受験を経験することも、お子さんのプラスにはなるでしょう。その一方で、中高一貫校の受験に関しては、まったく違う能力と対策が必要です。親御さんも今時の適性検査について教えたり、フォローするのは難しいと察します。
いわゆる【塾なし】や【親塾】として、ご家庭で準備するのは大変だと思いますが、チャレンジする価値はあります。
まとめ
公立中高一貫校の受験に対応した学習塾、家庭教師を利用しているのであれば、計画的に受験対策を進めてくれたり、不足しているポイントをフォローしてくれると思います。
また、公立中高一貫校専門の「eラーニング」のように、オンライン映像授業で対策するのも、時間制約や月謝負担のメリットも大きいので、おすすめできます。
学習塾や家庭教師を使うことなく、受験対策を行うのであれば
・受験する学校について調べて
・受験内容を収集して
・受検対策を考えて
・お子さんと足並みを揃えて
・お子さんのモチベーションを維持して
やることがたくさんあります。今回の記事では、適性検査をテーマにして、知っておいていただきたい事前情報をまとめました。
たった1回の本番のために、何ヵ月も順調に過ごすことは難しいと思います。お子さんの成長期とも重なりますので、受験に対する考え方、親御さんとの関係性も変化するかもしれません。
個人的には「受験したら合格」くらいの感覚が理想と思います。
理由は3つあります。
①適性検査を解けるだけの能力を習得した
②数ヵ月も計画的に走り切った
③合格するかどうかは、問題の相性や当日のコンディション、うっかりや緊張もあるので「合否の半分以上は運任せ」だけど「受験本番まで走れるかどうかは本人次第」
特に③です。
公立中高一貫校は人気が高く倍率が高いです。栃木県では倍率3~4倍になりますから、そもそも
「頑張っても、合格しない可能性の方が高い」
「でも、頑張らなけければ合格しない」
この視野を親御さんは持ってもらいたいです。
最後に「eラーニング」の活用も検討してみてください。より専門的な指導を行っている講師が、映像授業で公立中高一貫対策を計画的に進めてくれます。
自宅で受講でき、学習塾に通うよりも月謝は安い、しかもプロにお任せする安心感があります。何といっても親御さんのストレスは減るはずです。
参考にしていただけると幸いです。