個別指導塾で学習塾教室長を担当していた当時に、生徒数180名以上に伸ばし、直営とフランチャイズを合わせた1000校以上の教室で、常に上位の生徒数を確保してきました。
生徒数を圧倒的に伸ばすポイントをまとめますので、あなたが学習塾などの教育業界、または他業種であっても集客ビジネスで伸ばしたいと考えているようでしたら、参考にしていただけると幸いです。
今回のテーマは「退塾防止と講師」です。生徒と最前線で日々向き合う講師は、表現が悪いかもしれませんが、学習塾にとっては生命線であり、差別化の武器となります。多くのサービス業がそうであるように、個別指導塾は学生講師、パート講師、元教育経験者、主収入とする講師、正社員など様々な講師が集まって、その教室の雰囲気やレベルを決めています。
学習塾が少し難しいのは、お客さんが誰なのか?ということです。足を運んで授業を受けているのは、もちろん生徒です。月謝を払って、成績など結果を気にするのは保護者です。これは一概には表せないので、カンタンに書くと
①生徒が塾に行きたいのか?保護者が行かせたいのか?
②生徒は塾に何を期待しているのか?
③保護者は塾に何を期待しているのか?
について、教室長は個別に考えて「講師と連携しながら、とにかく継続してもらう」が当面のゴールです。
生徒数を圧倒的に伸ばすためには、集客も大切ですが、退塾(退会)をゼロに近づける努力の方が大切です。退塾が重なると、バタバタする割には生徒数は増えていない、事務作業にも追われてしまいます。そもそも退塾してしまう背景に、何かしら問題があるはずです。
継続するのことが大切さは、勉強だけでなく何においても変わりません。コロコロ化粧を変える美人はいないでしょうし、スポーツや趣味だって、ある程度継続しなければコツをつかむこともできません。
せっかく入塾した生徒を定着させるまでのポイントを、解像度を上げて解説します。
①生徒が塾に行きたいのか?保護者が行かせたいのか?
どのような立ち位置の学習塾なのか、それ次第ではありますが、多くの場合は「生徒が来たがっている」か「保護者(親)が行かせたがっている」のどちらかになるケースが多いと思います。
学習塾を利用したい目的はあるでしょうから、教室長としては可能な範囲で「どの講師が担当すれば、目的に近づくだろうか?」と考えます。講師には「あなたを担当にしたい」という背景や理由をしっかりと共有します。これを大前提として②と③に続きます。
②生徒は塾に何を期待しているのか?
生徒が自分から「成績を伸ばしたい!◇◇高校に行きたい!」と考えているのであれば、具体的な目標設定を上手に行って、グイグイ引っ張る講師を配置したいですね。できない場合は教室長(or 別な講師)がその役を果たします。
勉強する習慣をつけたい!ということであれば、学校での過ごし方、家に帰ってからの過ごし方までアドバイスできる熟練の講師を配置したいです。できない場合は教室長(or 別な講師)がその役を果たします。
「親に言われたから、しょうがないから来ている…」というテンションが上がらない生徒に対しては、勉強の楽しさを伝えられたり、無機質テキストと日常の生活を繋げてトークできる講師を配置したいです。できない場合は教室長(or 別な講師)がその役を果たします。本当に上手な講師は「親(友達)が、びっくりするくらい点数を上げちゃおうぜ」と乗せてしまいます。
どの講師も教えること以外に、得意不得意があります。どの講師もあらゆる生徒に対応できるのが理想ですが、現実的ではありません。生徒に対する寄り添い方は、どうしてもキャラクターや経験に左右されてしまいます。
最低限のコミュニケーション方法は統一するべきですが、それぞれの強みを活かして講師全員で生徒全員の満足度を一定以上に上げられるように、教室長は作戦を考えましょう。
とにかく入塾直後がポイントです。「入って良かった!」と早い段階で生徒が思わないと「ちょっと違うな…」となってしまいます。
③保護者は塾に何を期待しているのか?
当たり前ですが、保護者の方が「なぜここに入れたいのか?どうしたいのか?」をしっかり言語化できます。別な言い方をすると、要求がはっきりしています。これを早い段階で叶えてあげることを考えましょう。
具体的に「◇◇高校に行かせたい」と考えているのであれば、現在の成績を確認して、なるべくわかりやすくロードマップを示してあげます。体験授業、入塾手続き、保護者面談などの機会を活かして、一緒に考えることが大切です。どの教科をどれくらい伸ばせばいいのか、伸びない原因は何の単元がネックになっているのか、習熟度と模試の結果は一致しているのか、ぜひ時間をかけてみましょう。
私の場合は、生徒が解いた解答用紙や問題用紙も一緒に並べて、どのような点の取り方をしているのか?について分析していました。
・理解しているけど、凡ミスでバツだった
・よくわかっていないけど、偶然にもマルだった
このように、模試成績表には表れない特徴まで含めて分析して(ざっくりですが)保護者と共有することで、信頼を得て作戦を考えます。もちろん担当講師にも正直に伝えます。
「◆◆さんの国語は、10点下がってしまったけど、作文が最後まで書き切れていないね。どうしようと思う?」
のように、1点でも上げることに集中して保護者に「ここにして良かった」と実感してもらいましょう。
「とにかく学習習慣をつけさせたい」のような期待に対しては、こちら側の手が回せない部分が多すぎて大変ですが、実現できるルールをひとつずつ決めていくイメージです。
・授業開始の30分前には来て、自習室を使う
・授業中の60分間は、ペンを置かない
・就寝時間を必ず守る
このように誰にでも当てはまる目標だと、ノウハウが蓄積されやすいのでおすすめです。保護者面談の時に「そういえば変わった気がする…」と言ってもらえることを当面のゴールにして、講師経由で実現していきましょう。
ちなみに、私が勤めていた個別指導塾は教科選択型でした。入塾する際に受ける教科を選ぶわけですが、伸びそうな教科を選んでもらうことを意識していました。
ふんわりと「積み上げ型の数学と英語は、取り戻すのが大変ですよ」のように、数学+英語で選ぶのではなく「5教科のうち、どの教科がすぐに伸びそうか?」を見抜くことにこだわっていました。
・読む力はあるのに、なぜか国語が低い
・社会は好きなのに、全然点数が上がらない
・数学はわかっているのに、テストだとダメ
のように、すぐに伸ばせそうな教科を選んで、早い段階で結果を出してしまうことが重要です。保護者に「ここに入れて良かった」と感じてもらうことも必要ですが、生徒本人が「塾に入るとこんなに変わるんだ!」と驚くことが狙いです。
私自身の経験を中心に、生徒数を伸ばす(退塾を減らす)ポイントを紹介しました。教室長は大きな戦略(この生徒にとっての当面のゴールは何だろう)を考えて、そのゴールにもっとも近づけられる講師を巻き込む、これが必勝パターンです。
ぜひ参考にしてみてください。