生徒数を圧倒的に伸ばすポイント⑤【講師を見れば教室長がわかる】

個別学習塾での教室長経験から、生徒数を伸ばすためのヒントを紹介しているシリーズです。今回で最後となりますが、講師との信頼関係がテーマです。とにかく生徒の人気を得るためにも、良い評判形成を築くためにも、運営を安定させるにも、何においても講師陣の質と頑張りが不可欠です。

あなたが、学習塾の生徒数を伸ばしたいけど成果が出ない…講師との関係性を見直したい、そもそも自分自身が教室長としてモチベーションが上がらない、そんな状況にあるようでしたら参考になると思います。

個人的な思いも大きいエピソードなので、ストーリー形式でまとめていきます。

翌々日から突然教室長になった

私のケースでは、もともとその教室にはベテラン教室長がいたわけですが、事情があり急遽「◇◇校に行ってくれないか」という打診を受けて、翌々日には異動した経緯でした。まさに準備なしで飛び込んだ感覚です。

それまでは同じ会社にいたとはいえ、まったく違う部署にいましたので、完全に未経験、私自身も遠い昔に学習塾を短期講習(しかもド田舎…)で利用した経験しかなかったので、生徒や保護者の気持ちもイマイチわからない…そんなスタートでした。

今振り返ると、あまり学習塾経営や教育業界を知らない状態で飛び込んだので、それが良かったのかもしれません。すべてが新鮮で、講師や生徒から相当大きな刺激をもらいましたし「普通、サービス業だったらこうするよね」というスタンスで、冷静に手を打てたと思います。

公休日が変わったり、勤務時間が変わったり、当初は生活が一変したことが若干大変でしたね。それより大変だったのは、私自身が教室長としてアウェーにならないことでした。

大荒れの教室

前任の教室長は、運営がパンクしている状態でリタイヤしたので、私が異動した直後の教室はなかなか荒れていた様子でした。机やイスがガチャガチャに並んでいたり、コンセントにはゲーム機が充電されている、自習室で本当に自習している生徒は一部で、チャイムもないから時間通りに授業がはじまらない…そんな状況でした。

とにかく怒りまくっても解決にはならないので、私はなるべく自分のデスクには座らずに整理整頓したり、ふらふらしている生徒には「もう授業がはじまっているよ」と声をかけて、とにかく勉強する場所を目指しました。

これ以上に問題が起きないように、教室全体を見渡していた、という期間が2ヵ月は続きました。

大荒れの講師

実際に講師が反乱をしていたわけではないですし、大部分の講師はこの状況で私が異動してきたので、協力しようという意思は感じました。一番荒れていたのは、授業組みです。授業スケジュールという表現の方がわかりやすいかもしれませんが

・新しく入塾する生徒の担当講師が決まっていない

・生徒が休んだ分の振替授業が延々と溜まっている

・今週分の授業組みしか終わっておらず、先々の予定がわからない不満が広がっている

このような状況でした。とにかく個別指導塾の教室長(副教室長)は授業組みが命です。講師も生徒もその通りに動きますし、授業組みにミスがあると教室全体が大混乱に陥ります。そんな状況でした。

とにかくアルバイト講師の都合を確認して、当面の授業組みを完了させて、私自身も「あの講師が何曜日に来る、どの生徒が何曜日に来る」と把握できるようにしました。慣れていないこともあり、みんなが見えていない部分では、ここにかなりの時間を使っていたと思います。

 

最終週には講師会が行われます。出られる講師が22時以降に集まって、今後の予定や教室の課題などを共有する機会です。私が異動してきた最初の講師会では

・授業組みをやってほしい

・自習室が足りない、乱れている

・生徒数が多すぎるのではないか

運営や教務以前の、そもそもの意見が噴出しました。それを真摯に聞いて具体的に改善するわけですが、私がこのタイミングで注力したのは1点のみです。

混乱の教室に右も左もわからない私が来て、最初の講師会です。ある講師には「大変なところに来ちゃったね」と心配してくれました。第一声は大切だと思い、ずっと考えていました。集まった講師に伝えた言葉は

「私はずっと皆さんと働きたいと思っていました。皆さんがこんなに真剣に生徒に向き合って、生徒の数も増えて忙しい状況になっていることを、察してはいたのですが、違う部署にいたことを理由に、実態をよくわかっていませんでした。それについては申し訳なかったです。

しかし、この時代にどんどん生徒数を伸ばしている皆さんは、どんな方で、どんなチームなのだろう。そのような興味を持っていたのは事実です。私はずっと皆さんと働きたいと思っていました。それが突然叶ったわけですが、私が教室長としてできることは限られています。一緒に最高の教室にしていきましょう」

このようなメッセージだったと思います。全部が本音ではありますが「皆さんと働きたかった」という一番伝えたい内容は、自分に言い聞かせている面もありました。

マネジメントやリーダーシップについては、いろんな考え方や方法論があります。しかしながら、その内容を展開するための信頼関係をしっかり固めることが、何よりも重要です。ましてや「私は建て直すために来ました」なんてスタンスは、どこか他人事のようで逆効果です。

「私は皆さんと働けることがうれしい」これだけはちゃんと伝わるように意識していました。あの局面を乗り越えられたのは、講師の方々の献身的な協力があってこそでしたので、本当に感謝しています。

大荒れの生徒と保護者

ここについても、毎日毎日クレームが届いてお詫びをしていた、というわけではないのですが、顧客管理という意味では相当危険水域に達していました。

前任に教室長だけが把握している、という項目が多かったために、いきなり緊急事態に陥ることも多々ありました。

緊急事態①

ある日の夕方、まったく知らない親子が書類が入った封筒を持ってやって来て「今日からお世話になります」と言われた時には「終わった…」と天を仰ぎたい気分でした。すでに体験授業が終わり、入塾に必要な手続きを終わらせて授業初日を迎えた状況です。

当然授業は組まれていないし、その書類を見ながら教科や時間を確認、担当できる講師に急遽「とりあえず今日はお願いします!」とお願いしていました。これがちょいちょい起きていましたので、天を仰ぎすぎて首がおかしくなりそうでした。

緊急事態②

いきなり電話がかかってきて「曜日変更の件はどうなりましたか?」のように、知らない確認を求められることも多発しました。部活や保護者の都合で、授業の曜日や時間を変更したい要望は頻繁に発生します。それ以外にも進路相談や季節講習の申し込みなど、それが教室長の返事待ちで放置されている状態なので、こちらは最大級に慌てます。結局もう一度説明をしてもらって、遅れて対応することになります。

緊急事態③

これは②に近いのですが、クレームの電話をいただいたケースです。こちらに非があることをお詫びするのはもちろんですが、困るのは「この方が何に怒ってるのかわからない…」という最悪なパターンです。

しょうがないので自己紹介を兼ねて事情を説明して、怒っている方に対して「何に怒っているのか?」を聞くというコントのような展開です。大きな迷惑をかけることになりましたが、最終的にはどのご家庭も理解をしてくれて、やがて情報分断によるクレームは皆無になりました。

運営に対する不満が爆発して、退塾する生徒も全体の2割は出るだろうと想定していましたが、結果的には2%程度に抑えることができました。

まずは日々の運営を安定させる

やがて半年もすると、授業組みが安定するようになり、チャイムが鳴って生徒が動く教室に変わっていきました。教室のリニューアル工事や大学生講師を増やすことで対応力を広げて、講師の評判が高まり生徒が増えるサイクルが回るようになってきました。

私自身は成績表だけでなく、問題用紙や解答用紙から課題を抽出する手法を高めていったり、まったく初心者講師でも安心して教えれらるようにガイドを作成したり、プラスアルファの手を広げることによって「成績が上がる塾」に変化させることに、集中できるようになりました。

各教科(国語・英語・数学・社会・理科)で講師リーダーを配置して、ある程度は現場を任さられる状況になり、問題解決や生徒数増加にも集中できるようになりました。

講師にもわかりやすい目標を

ここまで安定化させることができれば、講師会や日々のコミュニケーションを通じて、方針をはっきりと共有するだけです。

「生徒数=人気バロメーター=講師評価」と考えていたので、教室運営上の目標は生徒数全国1位でした。結果的にはもう一歩で叶いませんでしたが、生徒がそうであるように、講師に対しても直感的にわかりやすい目標設定が良いと思います。

1000校以上ある直営教室、フランチャイズ教室のなかで2位の生徒数となり、個別指導塾としては最大規模の184名まで伸びました。兄弟の紹介、友人の紹介、他塾や家庭教師からの転塾など、様々な戦略を実行してきましたが、今回の記事ではそもそもの教室長のスタンスとは?を中心に解説を行いました。

教室長は教室内で誰よりも見られている

生徒数では一定の成果を出せましたが、その他に3年間の代打期間で実現できたことはありました。

・ブログを開始した(これが大きい)

・書くスキルを学んで、短編小説を書くようになった

・講師用ガイドを編集して、2冊の商業出版を実現した

 

  

 

教室長としての学びは「部下は聞いてない、見ている」ということです。部下という表現にしていますが、ここでは生徒や講師を指しています。生徒のことを、たかが子どもだと思って力を抜く部下もいましたが、それは厳しく注意をしていました。生徒こそ講師(というか大人)を良く見ています。

 

結局「私はこうしようと思っている」と考えたり、話したところで、相手はほとんど聞いていないし興味がない、と思った方が間違いないです。その代わり「上司は何をしているのか?」はよく見ています。その姿から「上司は何を大切にしているのか?何を変えたいのか?」をわざわざ聞かされなくても察します。

 

体験に基づいて、講師力で生徒数を伸ばすポイントを紹介しました。集客型のビジネスモデルにはほぼ当てはまる考え方ですので、参考にしてみてください。