いつもは高校受験や大学受験についてアドバイスをまとめているブログです。今回は学習塾教室長の目線で、理科や数学に役に立つ本を紹介します。「素数ゼミの謎」という本です。集中して読めば中学生でも1時間くらいで読めるボリュームではないでしょうか。
理科でいうと、生物の分野の勉強になります。
数学でいうと、素数の性質をより深く理解できます。
もしあなたが中学2年生くらい、休みの日に何か読もうかなって思っているくらいであればオススメですね。参考にしてもらえるとうれしいです。
そもそも、セミって不思議な動物です。
あまり興味がない人でも、セミの不思議な一生はある程度知っていると思います。
木に植え付けられた卵から幼虫が産まれて、土に落ちます。
そのまま地中に潜って木の根から水分をもらいます。
セミの種類や周りの気温により変わりますが、そのまま何年も過ごしますね。
土の中では何回も脱皮を繰り返して、徐々に地上に出る準備をしているようです。
やっと地上に出て、飛び立つようになったらオスは激しく鳴きまくります。
メスはその鳴き声でオスに寄ってきて交尾をします。
卵を木に植え付けて、地上に出てからたった数週間で命が終わります。
人間から見ると「何のための命?」と思ってしまいそうです。
私も学生時代は「うるさくて、でもあっという間に死んじゃう可哀想な昆虫」くらいのイメージでした。しかし…セミは恐竜が大繁栄していた時代にはすでに飛んでおり、何度も大きく変わっていく地球環境で生き延びています。生物の最大の使命は「子孫を残すこと」ですから、セミは子孫を残すことに関してかなり優秀な昆虫ですね。
実際、セミが地中にいる数年間は外敵に襲われる可能性が低く、根から吸い上げた水分を確保できる環境です。一斉に夏に地上に出ることで、たくさんのオスとメスがいる状況になります。交尾の回数が増えて卵を産むことができます。
「素数ゼミの謎」ではアメリカで13年おき、17年おきに大量発生するセミを紹介しています。決まった年数で大量発生する、しかもそのエリアが決まっている不思議なセミです。
・なぜ13年、17年もの長い間、地中に潜っているのか?
・なぜ決まったエリアだけなのか?
・そしてなぜ13、17という素数なのか?
以前から、様々な研究者が考えて発表してきたようです。
数万年、数十万年に及ぶ壮大なストーリーとこの謎を、小中学生にもわかりやすいように説明してくれます。原理原則に沿っている内容だからわかりやすいのだと思います。
根から充分な水分を確保できない氷河期には、地中に潜っている年数は長くなります。そして初めて地上に出て飛び立つときに、たくさんのセミがいることが非常に重要です。この「初めて地上に出たときに、たくさん交尾する相手がいる状態」を実現するために、違うエリアに飛んで行くようなチャレンジはしませんし、地中に潜っている年数が素数であることが有利になります。
理科については、生物の進化を不思議なエピソードで実感できることでしょう。教科書に載っているような、遺伝とか食物連鎖とか難しいことを説明しているわけではありません。ただ「今うるさく鳴いているセミってすごいんだなぁ」と思うんじゃないでしょうか。もし理科に対して苦手意識を持っているなら、ここからで充分ですよね。
数学は素数です。素数は教科書などで「2以上で、1と自分自身以外ではない割り切れない自然数」と世にもわかりにくい説明をされる数字ですね。
・13はかけ算にバラすと、1×13にしか書けない、だから素数
・14はかけ算にバラすと、1×14とも1×2×7とも書ける、だから素数ではない
具体的に書くとこんな感じです。
数学に対してアレルギーがあると「で、だから何?」みたいなところでしょう。素数を考えることでパスワードの暗号化に繋がったりしますが、これも例としてはちょっとピンとこないですね。
この素数があることで、あるグループのセミが今に生き残っています。それが素数ゼミです。
「素数ゼミの謎」を読んでもらえれば、少しは素数を身近に感じられる思います。素数は有利だなってわかってもらえれば、現代のパスワード技術にも使われているのが理解できるはずです。割り切れないこと、そして規則正しく並んでいないことが注目される理由です。
読みやすく、理科と数学を実感できるオススメの一冊です。読書感想文も書きやすいテーマです。機会があればぜひ手に取ってみてください。